千喜田花卉園

 
 

千喜田花卉園 千喜田 直也さん&樹理さんのあゆみ

実家を継いで就業、菊の栽培を開始。

直也さんは佐賀商業高校を卒業後、専門学校でビジネスを学び、家電量販店に勤めていました。商業高校時代にビジョンを考える際、実家を会社化できたらいいなと書いていて「その頃から継ぐことは選択肢にあったのかもしれない」と語ります。お兄さんが実家に帰らないことを聞いて戻る決心をしました。

talk1

経営視点で未来を見る。

輪菊からスプレー菊へ転換し、ようやく「花を作ってるんだな」と実感したそう。

直也さんへ経営移譲。

talk2

一歩踏み出すこと。

染め菊の開発と、樹理さんのウエディング業界経験をいかした6次産業化をはじめます。

talk3

支えてくれる人

よろず支援拠点の支援を得て販路の開拓やブランド化を進めていきます。

talk4

千喜田花卉園のこれから

自分色の、新しい世界。

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経営視点で未来を見る。

直也さんが実家である千喜田花卉園へ戻ったのは10年ほど前。八女にある菊農家で1年間の修行期間を経て、実家へ戻って以降、積極的な経営戦略で動いていきます。花の単価を下げないように、県内に限らず県外も含めた複数の市場へ出荷をしました。すると、出荷量が追いつかなくなってきたため、新しいハウスを建設します。順調に出荷量を増やしてきた直也さんですが、2022年に経営方針を変更しました。

「これまで輪菊をメインに栽培していたんですが、スプレー菊の栽培をメインに切り替えました。理由は2つあって、1つ目は、輪菊は人の手で花一輪に仕立て上げるので人件費がかかり、栽培期間がスプレー菊より1ヶ月ほど収穫サイクルが長いこと。効率を考えると、スプレー菊の方が良いんです。もう1つは、コロナ禍とウクライナ情勢の影響で、スプレー菊が輸入されず、市場に足りなくなったんです。実際に花屋さんからの要望も耳にして、需要と供給のバランスもとれて市場の価格もある程度安定するかなと考えました。」

「今後また輸入できる状況になっても、国産、しかも佐賀で栽培している方が鮮度も良く長持ちなので、花屋さんもそちらを選んでくれると思います」と樹理さん。
さまざまな要因をしっかり捉え、冷静に経営戦略をたて、着実に実行する。夫婦ともに、経営視点で未来を見ている様子が垣間見えた瞬間でした。

一方で、効率を突き詰めた先に出会った感覚もありました。「仏花としての白い輪菊だけを栽培しているときは、同じものをつくることをただただ繰り返す作業なので、花というよりはモノを作っているような感覚があったんですよ。白以外の菊を育て始めてようやく、花を作ってるんだなと思えました。白以外なら好きな色の花をつくれるから、自分たちも楽しみです。これ、どんな花咲くんだろうねって。」

talk2

一歩踏み出すこと。

そして、次に樹理さんを中心に染め菊など6次産業化を開始。元々ウエディング業界で、プランナー、式場の音響や演出、動画制作の営業などさまざまなジャンルの職種を経験し働いていた樹理さん。業界柄、花に触れる機会は多かったものの、あくまで仕事で扱うもので、特別興味があったわけではなかったと話します。嫁いでからは出産・子育ての期間もありながら、馴れない農作業に取り組んでいったそう。

「元々は夫が規格外の菊を活かしたくて菊を染めてるのを見ていて、これ売ってみたら?と言ってたんですよ。でもそこまでやる余裕がないって。なので、まずは染めること自体を、遊びも兼ねて家の作業場でちょこちょこ試している感じでした。試しながら“この品種の菊は染まりやすいね”とか、少しずつ分かってきたんです。大変だけど、日々新しい発見があって楽しい部分です。今年の冬は染める作業もハウスでするようになったんですけど、それも寒さが厳しいと染まらないっていうことが実体験からわかったからなんです」と、日々実験を楽しみながら、取り組んでいる様子が伝わってきます。

6次産業化を始めたきっかけについてはこう話します。
「実は私、知り合いがいない環境に嫁いできて、家族以外ほとんど人と接することがない仕事で、精神的に落ち込んでしまってたことがあって。なんかもっとちゃんと仕事がしたいな、この状況をどうにかしたいなと思った時に、以前聞いたことがあった“6次化”という言葉を思い出したんです。それで、花の6次化ってなんですか?って問い合わせたんです。」
そこから染め菊だけでなく、それを用いたアレンジメントやドライフラワー、クリアアートリウムなどの雑貨までさまざまなものを、夫婦2人で楽しみながら生み出していきました。

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支えてくれる人

サポートセンターとよろず支援拠点で連携しながら、事業計画、商品開発、販売戦略と販路開拓に関する支援を進めていきました。佐賀よろず支援拠点の今里暁子コーディネーターは千喜田さんの支援をこのように振り返ります。
「千喜田さんは経営を学び、何でも自分事として捉えられています。やり方をお伝えするとすぐに実践し報告してくださるためフィードバックもしやすく、伴走支援(千喜田さんが先頭を歩き、そこに伴走している)という理想的な形です。」

「また、小さなお子さんがいらっしゃるお2人は、協力しあって育児と仕事を両立させていらっしゃいます。そのようななかで、伝統を守りながらも新しいことにチャレンジする姿は今後の農村ビジネスで最も理想的だと感じます。」

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千喜田花卉園のこれから自分色の、新しい世界。

「まずは生産者としてこの菊の良さを知ってもらいたいです。そのために直販をしてみたいし、アレンジやドライフラワーでハンドメイド用のパーツを作ったり、いろんな形でお客さんに届けたいんです。花屋さんになりたいわけではないんです。
実はこのアレンジメントも推しに向けて作ったんです。コーディネーターとも話してたんですが、私がオタク気質なこともあって、推し活と相性いいんじゃないってアイデアがでて。そういう風に、興味のあることは片っ端からやっていきたいです。佐賀で初めてアニメとコラボする農家になりたいので、これを読んだ方ぜひ声を届けてください!(笑)」

仏花としてのイメージが強い菊を、自分色に染めて新しい市場を切り開いていくチャレンジ。この先、2人の目の前に広がる世界がどんな風に色づいていくのか楽しみです。

支援機関・体制

東松浦農業振興センター / 補助事業紹介、生産技術支援

農山漁村発イノベーション中央サポートセンター / 経営全般に係る支援

佐賀県産業イノベーションセンター / 各専門支援

・佐賀県よろず支援拠点…ECサイト立ち上げ、販売戦略、販路開拓

・さが農村ビジネスサポートセンター…各種事業活用