株式会社百姓屋

 
 

百姓屋 市丸 初美さんのあゆみ

夫の退職を機に就農、義両親から養鶏を引継ぐ。

義両親の大変そうな姿を見ていて、農業にあまり良い印象はなかったけれど、夫との時間が増える喜びの方が大きかった。しかし、就農時に借金が発覚…!ショックすぎて1週間ほど寝込みました。

花木栽培をスタート。

養鶏以外もやりたい!と、農協に相談して花木栽培をはじめます。お互いが責任を持つため、初美さんが花木部門、養鶏部門は夫が管理することに。

パソコンでの複式簿記基調管理・申告

せっかく学ぶなら周りも巻き込もう、と近隣の農家夫婦でともに学ぶ『らくらく会』を発足し運営します。

花木部門を花苗部門へ転換。

家族経営協定を締結。

家族で話し合い、みんなが意欲と能力を存分に発揮できる就業環境へ。

集中豪雨で被災。

出荷間際の苗がすべて流れてしまう甚大な被害。復旧作業で結束がさらに強固に。

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家族だからこそ。それぞれの責任とやりがい。

加工品『山ん鶏』が誕生し、直売所をオープン。法人化して家族が続々と就農しました。

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思い入れのある商品のリブランディング

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百姓屋のこれから

花苗部門の躍進を誓って

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家族だからこそ。それぞれの責任とやりがい。

百姓屋で育てる骨太有明鶏は飼育期間中に抗生物質・抗菌剤を使用しません。その分、手間ひまを惜しまずに鶏たちが快適に過ごせるように環境管理を徹底しています。それだけ大切に育てているからこそ、 “自分たちが生産したものを、もっとみんなに知ってもらいたい”という想いを抱くようになった初美さん。伊万里市役所からのイベント出店依頼をきっかけに、その想いを形にする加工品開発がスタートします。 「せっかく無薬で育てたブロイラーだから、添加物は一切入ってほしくない」と、加工事業者のもとへ夫婦で出向き、熱い想いを伝えた結果、念願の無添加で加工品が完成! 展示会などへも積極的に出展し、徐々に販路を拡大していきました。

この経験を通して気づいた「自ら生産した農畜産物に、自信と誇りを持ち、安心安全な商品を届けたい」という想いが原動力となって、直売所『百姓屋』を開業することに。このとき、自分が責任を持って実現する、という気持ちから、初美さんご自身の名義で事業計画・申請・資金借入を行ったそう。 直売所では自分達が生産した骨太有明鶏の加工品や花苗の販売をしたり、ハーバリウムやスワッグづくりのワークショップを開催するなど、お客さまとの対話・体験スペースとして運営しています。 その後、鶏舎への設備投資も行って飼育数を順次拡大。2010年の日本チャンキー協会坪産肉量部門で、全国1位の成績をおさめます。2012年には『株式会社百姓屋』を設立しました。このとき既に長女と長男は就農していましたが、法人化以降、次女・次女の夫・長男の妻が就農していきます。

初美さんは就農から法人化までを振り返り、こう話します。 「ずっと農業が中心でした。借金があって良かった…とは言えませんが、今思うと飼育管理や経理を見直すきっかけになったし、家族経営協定を結んで、それぞれが責任をもって農業に従事することができました。一方で、自分たちのやりたいことをできることから少しずつ形にしたりと、できる限り楽しめるようにやりがいを持って歩んでくることができたと思います。」

「子どもたちを旅行に連れて行ったりはできませんし、普段の遊びも一緒に山へ行って花の種を採ったり、ハウスでお喋りしたりと、どうしても農業絡みになってしまって。家での会話も農業のことが多くて、議論が白熱することもよくありました。でも、うちの子どもたちはそれを楽しい、って思ってくれたみたい。」

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思い入れのある商品のリブランディング

こだわりを持って作り上げた自信と誇りと愛情の結晶『山ん鶏』。 「百貨店等の通販ギフト商材として販売が増えていましたが、自社ECサイトでの販売に力を入れていくにあたって、さが農村ビジネスサポートセンターに相談しました。プランナーとして派遣されたデザイナーさんと『山ん鶏』のリブランディングを行うことになりました。ロゴマーク・パッケージ・リーフレット・Webサイトにユニフォーム… と、大規模なリニューアルとなりました。」

『IMARI YAMANDORI』としてリニューアル後、少しずつECサイトの方にも動きが現れたようです。また、この機会に初めて生活雑貨の展示会に出たところ、多くの引き合いがあったそう。思い入れのあるものを変えることは勇気がいることですが、時代に合わせて商品も売り方も変化させていく必要があるのだと感じます。

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百姓屋のこれから花苗部門の躍進を誓って

栽培のノウハウがない状況から試行錯誤し、地道に続けてきた花苗事業について初美さんはこう語ります。
「百姓屋の花苗部門では、養鶏農家の強みを活かした鶏ふん肥料を用い、発色が良く、丈夫な花苗を栽培しています。スタッフは女性のみ。品種や色の選定、細やかな栽培管理は娘たちを中心に女性らしい感性を活かして行ってくれています。また、寄植えセットやドライフラワー雑貨などをつくったり、販売会を開催したりと、お客さまとの交流も大切に。娘たちはガーデンコーディネーターや植物雑貨クリエイターなど、それぞれが興味のあるものを学んで資格を取り、仕事に活かしてくれています。地道に続けてきて、ファンがついてきてくれている実感があります。」

「花苗部門はブロイラー部門と比べると事業規模が小さいので、会社として考えた時には事業を縮小したり、やめる選択肢が出たこともありました。でも、自分が好きで始めたことだし、うちの花を待ってくれるお客さんもいる。今後はより発展して、たくさんの人を笑顔にできるよう頑張りたいと思っています。」

今後は栽培ハウスの増設を予定しているほか、オリジナル品種の開発が進行中。現在、花苗部門の責任者は次女、新品種開発は長女が担当しているそう。母の想いを娘2人が引き継ぎ、更なる事業発展へ向け進んでいます。
就農以来、夫婦それぞれが責任を持ちながら、新しいことを始めるときには一緒に考え、力を合わせて行動する。2人が貫いてきたその姿勢は、子どもたちの目に、とてもカッコよくて楽しそうに映っていたようです。それが子どもたち全員と、それぞれの家族も就農する、という結果に現れているように思います。そして、家族みんながいきいきと輝ける農業経営が続いている姿は、家族がひとつになって、あたたかい未来を育んでいるように見えました。

支援機関・体制

西松浦農業振興センター・伊万里市役所 / 補助事業紹介・生産技術支援

久留米花卉農協・長崎花市場 / 花苗の販売支援

たなべ屋・オンワードマルシェ・佐賀冷凍食品株式会社 / 各専門支援

佐賀県産業イノベーションセンター / 専門支援(さが農村ビジネスサポートセンター)